静寂が広がる手つかずのビーチに穏やかに打ち寄せるエメラルドグリーンの波。古代のままの姿を残す風景に響き渡る伝統歌。煌めく青い海を優雅に泳ぐザトウクジラ。静かに輝く神秘的な生命が息づく水中世界。大自然が残る西オーストラリア州で、夢の旅行を実現しましょう。
ジュリー・ホスキングの特集記事
ツアー会社を利用して、西オーストラリア州の各地に残る本物の大自然を体験しに行きましょう。まるで異世界にトリップしたような非日常の瞬間が待っています。広大な西オーストラリア州には、自然の驚異が織りなす絶景が広がる夢のデスティネーションが各地に点在しています。一つひとつをゆっくりと楽しみながら、最高の思い出を作りましょう。
海上と海中を探検
永遠に広がるターコイズブルーの海に囲まれたジオグラフ湾(Geographe Bay)で、列車に乗り込み水平線に向かって出発しましょう。静謐に包まれた夢のひと時が始まります。列車が進むにつれて、沖で戯れるイルカや浅瀬を優雅に泳ぐオニイトマキエイが見えてきます。かつて産業港として利用されていた全長1,841mのバッセルトン桟橋(Busselton Jetty)は、南半球最長の木造桟橋です。ワインで有名なマーガレット・リバー地区(Margaret River Wine Region)へのゲートウェイとなるバッセルトン(Busselton/Undalup)の海上に建つチャーミングな建物は、1865年から残る史跡です。この建物は現代風にアレンジされ、注目の観光スポットとして多くの人々を惹き付けています。太陽光の力を利用して走る「エクスプレス」列車に乗り込みバッセルトン桟橋の終点についたら、水中世界への入り口が待っています。桟橋の終点には、世界でわずか6か所にしかない珍しい海中展望塔があります。ここから水深8m まで降りて、一面にサンゴが生息する水中世界に息づく多様な生命を観察できます。すべて展望塔内から見学できるので、水着に着替える必要はありません。実際に海に入ることもできます。興味のある方は、そのまま泳ぐか、大きめのマーメイドテールを装備したシュノーケリングにトライしてみましょう。タコやタツノオトシゴと一緒に泳げます。また、水中には見事な彫刻が13体置かれており、人工のサンゴ礁として水中の新たな目印になっています。幻想的な水中世界へ、さっそく旅立ちましょう。
古代のスピリットを感じる
レッデル・ビーチ(Reddell Beach/Jabarragun)では、全身にペイントを施したピンティリ族のダンサーたちが、カリ(ブーメラン)をリズミカルに叩きながら弧を描く足踏みダンスを披露してくれます。この地域の先住民が引き継いできた伝統には、槍や鳥、星の歌もあります。伝統歌は祖先が見た夢の内容に基づいて生まれ、何世代にもわたって受け継がれています。これらの歌は、ヤウル族とカラジャリ族が共に伝統文化を守ってきた古代から残る神聖な場所と密接に結びついています。マブ・ブル・ブルーム・アボリジナル・ツアーズ(Mabu Buru Broome Aboriginal Tours)のジョアニ・マフミド(Johani Mahmid)氏と一緒に行くワカジ(Wakaj)体験ツアーに参加してみましょう。ヤウル族とカラジャリ族の子孫であるマフミド氏が、手つかずの砂浜とエメラルドグリーンの海を隔てるようにそびえ立つ黄土色の岩が印象的なブルームBroome (Rubibi)の海岸まで案内してくれます。「ワカジ」とはアボリジナルピープルの言葉で「家族の集い」を意味します。このワカジ体験では、6万年もの歳月を遡る古代からの原生地域が広がる壮大なキンバリー地域に訪れます。キンバリー地域は、本物の大自然と一体化できる、世界に残る数少ない貴重な場所です。アボリジナルピープルの音楽やストーリーを五感で感じながら、キャンプで沸かしたお茶と一緒にダンパー(ヨーロッパからの入植者が当時食べていた伝統的なパンの一種)を食べて、古代から残る大自然を全身で体験しましょう。
クジラと戯れる
双胴船に乗り込み、永遠に広がる青い空の下、エクスマウス湾(Exmouth Gulf)に広がる深いブルーの海に浮かびながら、扇状に広がるザトウクジラの群れを見下ろしてみましょう。出産を控えたザトウクジラの母親たちが、水温が高めの海域を求めて世界遺産のニンガルー海洋公園(Ningaloo Marine Park)にやって来ます。この時期、ニンガルー・ディスカバリー(Ningaloo Discovery)のサラ・エリス(Sarah Ellis)氏は、ほぼすべての時間を海上で過ごし、夢のような瞬間を目の当たりにしています。ザトウクジラの出産シーズン以外でも、ニンガルー(Ningaloo/Nyinggulu)では素晴らしい光景を一年中見ることができます。世界最大の裾礁のほか、浅瀬や海底に無数に生息するカラフルなサンゴと迫力満点の海洋生物など、無限の魅力が詰まっています。外海の波から隔てられた静かな入り江でリラックスしたり、海に出て海上で夕日を眺めたりと、大自然の美しさを満喫しましょう。また、ザトウクジラの親子やユニークなオニイトマキエイ、好奇心旺盛なジュゴンも観察できます。また、ニンガルーでは3月から8月にかけて、魚類では世界一の大きさを誇る穏やかなジンベイザメとのスイミングという、夢のような体験を実現できます。
壮大なアドベンチャーに出発
素足の下で砂が鳴る真っ白なビーチが透き通ったターコイズブルーの海につながる静かなトワイライト・ビーチ(Twilight Beach)で、静寂に浸りましょう。このビーチは、エスペランス(Esperance (Kepa Kurl))の息を吞むほど美しい海岸沿いに点在する外海の波から隔てられた入り江にあります。エスペランスは、レシェルシェ半島(Recherche Archipelego)のケープ・ル・グラン国立公園(Cape Le Grand National Park)に隣接する町です。ブーメランのような形をしたエスペランスの町は、この地に古代から暮らすヌーンガー族から「ケパ・クール(Kepa Kurl)」と呼ばれており、あらゆる意味で、とにかく「大迫力」です。この地域では、エスペランス・アイランド・クルーズ(Esperance Island Cruises)とエスペランス・コースタル・ツアーズ(Esperance Coastal Tours)の経営者、ジェイメン・ハドソン(Jaimen Hudson)氏が、海岸線に沿った20km の遊歩道を辿り、海上も探検できるツアーを催行しています。ラッキー湾(Lucky Bay)でカンガルーと日光浴を楽しんだり、トワイライト・ロック(Twilight Rock)から海に飛び込んだりと、エキサイティングな体験を楽しめるほか、ドルフィン・コーブ(Dolphin Cove)では、その名が示すとおり多数のイルカに出会えます。また、この地域では、オーストラリアの歴史で唯一記録が残る海賊として知られているブラック・ジャック・アンダーソン(Black Jack Anderson)の足跡も辿れます。ブラック・ジャック・アンダーソンは、この地域に浮かぶ美しい115島の一つで、エスペランスに点在する鮮やかなレインボーの色彩を放つ湖があるミドル島(Middle Island)を拠点として、周辺の海域を支配していました。この美しい自然の中ではるか昔に暮らしていた先住民が数々の夢を生み出したと、ハドソン氏は語ってくれました。
(情報:2024年1月現在)