小鳥のさえずり、美しく開花するラン、冬眠から目覚めるトカゲたち──ヌーンガー族の季節「ジルバ(Djilba)」は、これから訪れる晴天の日々をそっと知らせてくれます。


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アート事業も手掛けるツアー会社、ジュランディ・ドリーミング(Djurandi Dreaming)を運営するワジュク・ヌーンガー族のジャスティン・マーティン氏(Djurandi Dreaming)は、ジルバの季節の訪れは、目よりも耳で感じる変化だと説明してくれました。

ジルバの訪れは、はっきりと目に見えるわけではなく、ワジュク・ヌーンガー族は、この変化を「Djilba mai walkanginy(ジルバの音がここで聞こえる)」と表現するそうです。

パース(Perth/Boorloo)と周辺地域では、ジルバの季節は通常8月から9月にかけて始まります。マーティン氏によれば、ジルバの到来を告げるのは鳥たちの鳴き声です。コカトゥーの甲高い叫び声、カラスの哀愁を帯びた鳴き声、そしてカササギのリズミカルなさえずりを耳にすると、本格的なジルバの始まりを感じられるそうです。

「この鳥たちは縄張り意識が強いので、威嚇の意味を込めて大声で鳴くんです。」「鳥たちの大声が最初に耳に入るため、ジルバは目で見るより先に耳で感じることになります。鳥だけでなく、他の動物たちも一斉に活発になります」と、マーティン氏は説明してくれました。

縄張り争いだけでなく、ヌーンガーのカントリーに訪れる季節の変化を喜ぶ鳥たちの明るいさえずりも聞こえてくるそうです。


キングス・パークの野生の花々

キングス・パーク(Kings Park/Kaarta Koomba)のワイルドフラワー


「色とりどりの花々が一斉に咲き始めます」と、マーティン氏は語ります。「景観そのものが大きく変わり、さまざまな花が昆虫を引き寄せます。すると、その昆虫を求めて、数多くの鳥たちが集まってくるのです。」

加えて、パースとその周辺地域では、実に多様な花々を見ることができます。ジルバの季節に真っ先に彩りを添えるのは、アカシアの一種であるワトルで、黄金色の小さな花が房のように連なります。

「内陸に入ると、ランをはじめとした多種多様なワイルドフラワーが見られます。ランの中でも特に目を引くのは、スパイダー・オーキッドです」と、マーティン氏は続けます。

ジルバの季節には、鳥や花だけでなく、他の動物も活発になります。


ジュルダンディ・ドリーミングツアー

ロッキンガム、ジュランディ・ドリーミング


「気温が上がるので、爬虫類も出てきますよ」と、マーティン氏は教えてくれました。「ヘビやボブテイルリザード(ヌーンガー族の言葉で「ユーン(yoorn)」)を見かけるようになります。巨大なオオトカゲ(ヌーンガー族の言葉で「カーダ(kaarda)」)も日光浴に出てきます。」

さらに、ジルバの到来は天候にもはっきりと表れます。パース特有の心地よい暖かさが戻ってくることがサインです。

「雨が少しずつ収まり、太陽が顔を出し始めます。曇り空が一気に晴れやかになるのがジルバの特徴です。」

ジュランディ・ドリーミングでは、パースと周辺地域で年間を通じて4種類のツアーを開催しています。パース市街から南へ40分のロッキンガム(Rockingham)では、ロッキンガム・カルチュラル・ツアーが催行されています。このツアーでは、ペロン岬(Point Peron/Boya Kaarla)周辺の自然豊かな海岸線や石灰岩の断崖、文化的に重要な洞窟を巡ります。ジルバの季節には、この地域の景観が一層輝きを増します。

「ロッキンガム一帯には約200種の鳥が往来します」と、マーティン氏は続けます。「ジルバの時期には海洋生物の活動が活発になり、大型のワシや海鳥、湿地に生息するカモ類も見られます。ハクチョウも飛来し、毎日のように食べ物を探す様子が見られます。巣作りを始めることもありますよ。」


ひと味違う体験を求める方には、ロッキンガム近くのワリャンガップ湖(Lake Walyungup)やリッチモンド湖(Lake Richmond)で開催されるトーチライト・ツアーズがおすすめです。このツアーでは、先住民が語り継ぐドリームタイムのストーリーや、数千年もの悠久の時を生き抜いてきた微生物群「トロンボライト」を紹介します。暗闇の中で、昼間とは異なる生物を観察できる、特別な体験が待っています。


ジュルダンディ・ドリーミング、ロッキンガム

ロッキンガム、ジュランディ・ドリーミング


「日没後には、夜にしか見られないユニークな爬虫類やカンガルーが姿を現します。」「クモや多種多様な昆虫たちも次々に活動を始め、夜の湖畔は一変します。日中は姿を隠していた虫たちが一斉に動き出す、まるで神秘の世界のような光景です」と、マーティン氏は語ります。

ジルバの季節には夜空が澄み渡るので、夜のツアーでは満天の星を眺めることができます。マーティン氏は、美しい夜空を見上げながら、空に浮かぶエミュー(ヌーンガー族の言葉で「ウェイチ(waitj)」)のストーリーに思いを馳せるのが好きだと語ります。

マーティン氏の祖先がこの地で暮らしていた遥か昔、天然の食材である「ブッシュ・タッカー」が常に身近にあったそうです。また、祖先たちはカンガルーをブーメランや槍で仕留め、冬眠から目覚めた爬虫類をジルバの季節ならではの格好の獲物として狙っていました。

「先祖たちは、大きな平たい石を丸い石の上に置いて作る罠を活用していました。トカゲが日陰や隠れ場所を求めて小石の下に入り込む習性を巧みに利用したのです。こうして多数の罠を仕掛け、うまく引っかかったトカゲを捕まえていました。」

活発に動き回る生き物たちとは対照的に、マーティン氏自身は、ジルバの季節がもたらす穏やかな静寂に心を和ませ、喜びを感じるそうです。

「僕の趣味はラン探しです」とマーティン氏は語ります。マーティン氏のお気に入りの場所は、バルディビス(Baldivis)、ロッキンガム各地の湖、パースヒルズ(Perth Hills)などで、中でもジョン・フォレスト国立公園(John Forest National Park)では素晴らしい花が見つかるそうです。ランの繊細な花弁は、まさにジルバの美しさと儚さの象徴です。


(情報:2025年7月現在)