以前までは、西オーストラリア州の南西部で黒トリュフが育てられているといっても、好奇心を集める程度で、黒トリュフというとフランス南部のペリゴールのものだというイメージの方が強くありました。
今では、トリュフ愛好家が毎年西オーストラリア州を訪れるようになっています。好奇心からというよりむしろ、世界クラスの品質のトリュフを味わったり、トリュフ農園の舞台裏を覗いたり、生産者から少なくともいくつかの秘訣を教えてもらったりできると確信して訪れているのです。
パースから3時間余りで行けるマンジマップとペンバートンは、合わせてサザン・フォレスト地域として知られており、現在では南半球でずば抜けた黒トリュフ生産地域となっています。収穫された黒トリュフのほとんどは、アジア、北米、そして欧州に輸出され、条件にもよりますが、6月上旬から9月までのシーズンに世界トップのレストランの多くに提供されています。それでも、西オーストラリア州のシェフや各家庭でも楽しむのに十分な量が残ります。
パースでは、トリュフシーズンになると、トリュフを使った特別なメニューを出す多くのシェフやレストランに出会えます。トリュフをメインに考案された料理もありますし、普段のメニューにトリュフが加えられていることもあります。トリュフを使っていないシェフの方が、トリュフを使っているシェフより見つけにくいほどです。『WA Good Food Guide』は毎年、Truffle Unearthedというプログラムの料理イベントをパースと南西部の各地で実施しており、トリュフを中心としたメニューだけが並ぶ上質な体験ができます。
本物のトリュフの冒険がしてみたければ、絶対にパースから車で南西部に向かってください。カリーとジャラの木がそびえ立つサザン・フォレスト地域に行く道中には、ピール地域の横を通り過ぎ、ブラックウッド川バレーを通過します。その際に通るバリンガップとブリッジタウンは、風光明媚な写真スポットです。また、ブリッジタウンにはThe Cidery and Blackwood Valley Brewing Co.(ブリッジタウン、ギフィード通り43番地)があり、ここでは季節になるとトリュフエールとトリュフサイダーが作られています。伝統の味ではありませんが、トリュフが大好きなら絶対に立ち寄ってみてください。

マンジマップのトリュフ
毎年7月末に開催されるTruffle Kerfuffleは、始まってから10年で、世界屈指の知名度を誇るトリュフの祭典となりました。トリュフ農園のガイド付きツアーに参加してみたい人や、ハンドラーの指示に従って「黒い金」を嗅ぎ分ける高度な訓練を受けた犬を見てみたい人が、世界中から集まってきます。プログラムには、中央市場で生産者から直接トリュフを買える機会も準備されていますし、西オーストラリア州のグルメシーンを率いる面々や州外からの才能豊かなゲスト(これまでのゲストには、マーク・ベスト、ガイ・グロッシ、ジェイムズ・ヴァイルズ、マリアン・ラム、ジャック・スタイン、アナリエーゼ・グレゴリー、そしてダンカン・ヴェルヘメッドなどがいます)が参加するワインのテイスティングとグルメのイベントもあります。 この祭典は、例年は3日間開催され、その中心的な舞台となるのは歴史あるフォンティーズ・プールです。その周りにはトリュフ農園やその他の1次生産者が広がっており、こうした生産者のおかげで、サザン・フォレスト地域は西オーストラリア州の台所として評価を受けるべくして受けるようになりました。

Truffle & Wine Co.でのトリュフ探し
マンジマップのトリュフ
この祭典の期間に限らず、シーズンを通して農園を開放している生産者もいくつかあります。例えばAustralian Truffle Tradersでは、予約可能なツアーを定期的に実施しており、家族向けの探検ができます。訓練を受けたハンドラーとその犬に付いていき、歩きながらオークやヘーゼルナッツの落ち葉を蹴り上げていくと、匂いに気付いた犬が足で地面を叩いて合図をします。トリュフは、手とコテで掘り出します。非の打ち所のない小さな30グラムのトリュフが採れることもあれば、何百グラムにもなる巨大なトリュフが採れることもあります。ガイドは、農園はどのようなサイクルで回っているのか、オークとヘーゼルナッツの木にはどのようにして菌を植えるのか、そして農園が成功するには多くの科学的知識と栽培ノウハウを活かさなければならないということを説明してくれます。有名シェフのデイヴィッド・クーマーがオーナーと経営者を務めるCoomer Trufflesなどの生産者は、依頼があればオーダーメードの体験も提供しています。
ご想像の通り、オーストラリアのトリュフ地帯の中心に行けば、極めて多様な方法でトリュフを味見できます。マンジマップでは、Sööma(マンジマップ、ジブレット通り51番地、Garden View Court)のような地元のレストラン、Tall Timbers(マンジマップ、ジブレット通り88番地)のようなバーやパブ、そしてカフェ兼焙煎所のSouthern Roasting Co(マンジマップ、ジブレット通り96番地)など、あらゆるお店でトリュフ料理を頼めます。また、ペンバートンにあるカフェのWild at Heart(ペンバートン、ブロックマン通り52番地)でオーナーを務めるリサ・カドビーは、自身でもトリュフを育てています。またその機会に、この地域で育てられている寒冷な気候を好む品種のぶどうから作られるワインの味見もオススメです。地元のシャルドネ、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、そしてヴェルデーリョをお見逃しなく。そして、メニューにマロンがあれば、せっかくの機会なので地元で養殖されたこの甲殻類を試してみてください。
そこから西のマーガレット・リバー地域には、Vasse Felix、Voyager Estate、Wills Domain、そしてGlenarty Roadなど、西オーストラリア州最高のレストランの多くがあります。この地域のシェフは、毎年胸を躍らせながらトリュフシーズンを待ちわびています。マーガレット・リバー地域では、なぜ西オーストラリア州の南西部がこれほど上質なグルメとワインの文化で有名になっているのかを、また別の視点から窺い知ることができます。
更新日:2022年5月