滝を愛でる旅に出発(キンバリー)
ジュリー・ホスキングの特集記事
オーストラリア北西部に降る雨は、常に豪雨です。毎年雨季になると、恵みの雨がどこまでも広がる原生地域全体に降り注ぎ、乾季に水を失った滝が蘇ります。滝の中には通年水流が見られるものもありますが、どの滝も12月から4月にかけて水量が大幅に増し、太古の昔に形成された崖を水しぶきを上げて流れ落ち、黄土色の渓谷に流れ込む様子を見ることができます。この地域には、ボートや飛行機、ヘリコプターでしか近づけない滝が各所にありますが、カナナラ(Kununurra/Goonoonoorrang)から近距離に陸路でアクセスできる滝もあります。キンバリーには全域に見事な滝が点在していますが、どの滝を訪れても感動の光景が見られるはずです。一生の思い出を作りに行きましょう。
ミッチェル川国立公園、ミッチェル・フォールズ
キンバリーは、世界屈指の面積を誇る原生地域が残る貴重な地域です。キンバリーの壮大なスケールを実感するには、空から眺めるのが一番です。カナナラ(Kununurra)発のフライトに乗り込み、ミッチェル川国立公園(Mitchell River National Park)を飛び越えて大迫力のミッチェル・フォールズ(Mitchell Falls/Punamii-Uunpuu)を見に行きましょう。ヘリスピリット(HeliSpirit)のツアーでは滝面のすぐ傍に着陸してもらえるので、エメラルドグリーンの水を湛えた岩場を数段にわたって水しぶきを上げながら流れ落ちる、美しい滝の幻想的な光景を間近に見ることができます。スケジュールと体力に余裕がある方には、往復8.6km のハイキングコースがお勧めです(道中には遊泳可能な水場があります)。
ミッチェル川国立公園、ミッチェル・フォールズ
ララン-ガッダム海洋公園、ホリゾンタル・フォールズ
ホリゾンタル・フォールズ(Horizontal Falls/Garaan-gaddim)は、世界的に有名な動植物学者のディヴィッド・アッテンボロー卿から「世界を代表する自然の驚異」と讃えられている見事な滝です。遊覧飛行ツアーを利用すれば、美しい小島が浮かぶバッカニア諸島(Buccaneer Archipelago)を眼下に眺めながらタルボット湾(Talbot Bay)へと向かい、感動の光景を目にすることができます。ホリゾンタル・フォールズでは、潮の流れが作り出す全長10m にも及ぶ水平に流れる巨大な滝が、マクラーティー山地(McLarty Range)を形成する2か所の渓谷の間を渦巻きながら流れます。「ホリゾンタル・ウォーターフォールズ(Horizontal Waterfalls)」の名称はこの現象に因んでいます。
ララン-ガッダム海洋公園、ホリゾンタル・フォールズ
アーガイル湖、リボルバー・フォールズ
キンバリーにある知る人ぞ知るリボルバー・フォールズ(Revolver Falls)は、西オーストラリア州にある一段滝の中では最大の高さを誇ります。遊覧飛行ツアーを利用して、シドニー・ハーバー(Sydney Harbours)の20倍もの水量を湛える人工湖「アーガイル湖(Lake Argyle)」の端に位置する美しい一段滝を空からじっくりと眺めましょう。カー・ボイド山地(Carr Boyd Range)の上空から滝と湖を眺めるだけでは物足りない方は、着陸して周辺を探検してみましょう。この山地では、まばらな緑に覆われた赤紫色の崖の頂上に雨が降って断崖が形成されており、130m もの高さから一気に流れ落ちる幻想的なリボルバー・フォールズに見事にマッチする美しい景色が広がっています。ヘリコプターからこの断崖に降り立ってみましょう。
ノース・キンバリー海洋公園、キング・ジョージ滝
西オーストラリア州には対を成して流れる2本の滝が見られる場所がいくつかありますが、最大の高さを誇る名所をご紹介します。キング・ジョージ滝(King George Falls/Oomari)は、赤岩の断崖絶壁を勢いよく流れ落ちる高さ100m もの巨大な滝です。地上からでも上空からでも、大迫力の光景を楽しめます。先住民のバランガラ(Balanggarra)族が古代から暮らしを営んできた美しいカントリーの奥地にあるキング・ジョージ滝には、陸路で行くことができません。バランガラ族の伝承では、蛇神レインボー・サーパント(Rainbow Serpents/Wunkurr)のオスとメスがそれぞれの滝に宿っていると語られています。キング・ジョージ滝を見に行くには、カナナラ(Kununurra)かブルーム(Broome/Rubibi)発の遊覧飛行ツアーを利用する必要があります。また、クルーズ船でキング・ジョージ川が流れる渓谷を進み、轟音を辿りながら滝に向かうオプションもあります。
ノース・キンバリー海洋公園、キング・ジョージ滝
プリンス・リージェント国立公園、キング・カスケーズ
見る人すべてを圧倒させる、迫力満点のキング・カスケーズ(King Cascades)を見に行きましょう。キング・カスケーズには、プリンス・リージェント川(Prince Regent River)を進むツアーで行くことができます。この川はオーストラリア国内で特に蛇行が少ない流れで知られており、高さ50m の切り立った崖の間を流れています。ボートが目的地に近づいたら、段状の岩の上を滝が滑るように流れ落ちるキング・カスケーズの見事な全体像を、細かな水しぶきを肌に受けながら見られるスポットをデッキ上に確保しましょう。まさに感動の光景です。キング・カスケーズには空路で行くこともできます。プリンス・リージェント国立公園を機内から見下ろすと、息を呑むほど美しい景色が眼下に広がります。この国立公園は500種を超える植物の原生地であるとともに、キンバリー地域で確認されている鳥類や動物、イリエワニなどの生物の半数が生息する場所でもあります。
ヌガムーウォレム森林公園、モリー・スプリングス
西オーストラリア州にはさまざまな滝がありますが、滝は大きければ良いというわけではありません。カナナラ近郊のモリー・スプリングス(Molly Springs/Galjiba)には、水場に流れ込む全長数メートルほどの小さな滝があり、美しい風景に囲まれてリフレッシュできる貴重なスポットとして近隣の住民から愛されています。カスケード状の小さな滝が流れ込む、木陰が涼しい水場に飛び込んで、周囲を飛び交う野鳥のさえずりに耳を傾けましょう。運が良ければ、オオトカゲの姿も見られます。
ヌガムーウォレム森林公園、モリー・スプリングス
ヌガムーウォレム森林公園、ミドル・スプリングス
ミドル・スプリングス(Middle Springs/Mayiba)は、ヌガムーウォレム森林公園内のモリー・スプリングスからさほど遠くない距離にあります。「ミドル」という名が付いていますが、この水場は雨季に水量が増す公園内8か所の水場と滝の一番端にあります。滝が流れ込む静かな水場はダイナミックな岩に囲まれており、広々とした砂地から容易に入れます。脚力に自信のある方は、滝(と滝に連なる数か所の水場)に沿って岩場を登ってみましょう。頑張って上まで登り切れば、素晴らしい景色が目の前に広がります。
ヌガムーウォレム森林公園、ブラックロック・フォールズ
カナナラ(Kununurra)とウィンダム(Wyndham)の住民から愛されている水場としては、ブラックロック・フォールズ(Black Rock Falls/Theegoyeng)も挙げられます。この水場には年間を通して冷たく爽やかな水が湛えられていますが、特に雨季には水量を増した滝が流れ込む美しい光景が見られます。ミネラルを含有する滝の水で表面が黒く染まった崖の一部が、両脇に広がる日焼けした赤い岩と見事なコントラストを成しているので、この見事な風景をバックグラウンドに、楽しい水遊びの思い出を作りましょう。
カナナラ、ザ・グロット
高い岩場に囲まれた140段の階段を降り切ると、ピクニックに最適なザ・グロット(The Grotto)が広がります。カナナラとウィンダムの中間に位置するザ・グロットは見事な渓谷に形成された美しい水場で、明るい雰囲気に満ちています。雨季になると、水場の端にそびえる高さ120m の崖の表面を、水量を増した滝が勢いよく流れ落ちます。滝壺まで泳いで輝く水しぶきを全身で受け止めましょう。水場に張り出す木々にはターザンロープが結ばれているので、ロープにつかまって冷たく澄んだ水に空中から飛び込めます。
エル・クエストロ原生公園、エマ渓谷
カナナラから1時間程のドライブで行けるエル・クエストロ原生公園(El Questro Wilderness Park)の奥地にあるエマ渓谷(Emma Gorge)は、キンバリー地域の渓谷の中では比較的アクセスしやすいスポットです。エル・クエストロ原生公園は雨季に閉鎖されますが、雨季明け直後の5月でも水流が十分に残っています。岩の多い地形を数時間かけて渓谷の頂上まで登るには、気温が下がり始めるこの時期がお勧めです。道中は素晴らしい眺めを楽しめます。目的地の水場は壮大な崖に囲まれ、水しぶきを上げて流れ込む滝が神秘的な光景を演出しています。エマ渓谷は、いつまでも留まりたくなる素晴らしいスポットです。
エル・クエストロ原生公園、エマ渓谷
(情報:2024年4月現在)